今回は初めて神保町で開催しました。中国語の専門書店が並ぶすずらん通りのカフェに、原書ファンが集まり、熱いトークを繰り広げました。紹介された本は10冊ですが、みなさんの情熱が凄かった!その情熱と会の熱気を余すことなく伝えきれない私の無力さが嘆かわしいです。この熱さを体感したい方、ぜひ原書会にいらしてくださいね!

では早速紹介してまいりましょう。

☆稲村文吾さん(ブログ:『浩澄亭日乗』

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『清明上河图密码』
と~っても分厚いこの本は、宋の時代を背景にしたミステリー。主な登場人物は、5人の兄弟。一番上は役人で事件やもめ事の解決をしており、その下の4兄弟が事件に出会ってそれぞれの事件を解決していくのですが、最後にはそれが一つにまとまるという周到な設定のようです。これだけ厚い本ですが、続編も4冊ほど出ているとか。ちなみに文字数は58万字!

色んな階層の人の話が散りばめられていて、時代背景がなくても小説の中で説明してくれているので大丈夫のようです。少しもやもやは残るものの、1冊毎にストーリーは完結するようです。

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『臺北城裡妖魔跋扈』
稲村文吾さん2冊目は、台湾の本です。日本が太平洋戦争を始めていなく、台湾を手放していないという前提の1950年代を舞台とする歴史改変小説。日本が台湾を霊的に統治するために、日本にいる大妖怪を捕まえて台湾へ連れて行き、台湾を覆う結界をつくり、現地の妖怪を鎮めさせます。大妖怪は台湾の妖怪からも愛されていたのですが、台湾で日本政府の要人が殺害される事件が起きます。さらに大妖怪はこの殺人鬼に殺されてしまう事件が起こり、台湾の妖怪たちは大パニックになりながらも、殺人鬼を突き止めようと頑張る、というお話。

この小説の主人公は、台湾の小説家で、この小説家が親しくなった先輩の小説家がこの事件に関わっているらしいという設定も並行し、色々な要素が盛られたお話のよう。あらすじから分かる通り、こみいった話なので整理しながら読んだ方が良いとか。小説談義もあれば、日本と台湾の小説家のアイデンティティの対立や、日本と台湾の妖怪の話が入ったりと・・・色々な楽しみ方がある!とのことでした。現在第2部まで出ていますが、全部で何冊出るでしょうね?

ここで原書ファンのみなさん、ミステリー好きなみなさんに喜ばしいニュースがあります。稲村文吾さん、文芸春秋より翻訳本を出版されました!第3回島田荘司推理小説賞受賞作品の「ぼくは漫画大王」。会では本作出版にまつわる貴重なお話を聞かせていただきました。

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稲村さんが2年前に初めて原書会へ参加された時、中国語を習得された過程を聞いて大変驚いたことをよく覚えています。昔からミステリーが好きで、ミステリー好きが転じて中国語のミステリーにも興味を抱かれた稲村さん。中国ミステリーの翻訳が少ないのなら自分で翻訳してみよう!と思いたち、文法を全く知らない状況から辞書とネットを駆使してゼロから原書を読み始めます。驚きですよね!?真似できないスゴ技をさらっと語るところが稲村さんの謙虚さを表しているなあと思いながらお話をうかがっていました。次の作品は秋頃出版予定で、現在は別の作品を翻訳中とのことです。今後もどんな面白いミステリーをご紹介いただけるか楽しみですね。

紙・電子版両方ありますよ☆私は紙で読むことにしました。

胡 傑
文藝春秋
2016-05-28


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☆小雨さん

本のご紹介の前に、真似させていただきたいと思った小雨さんの読書方法。小雨さんは、原書を読む時は並行読みをされていて、"多読で辞書をひかないで読む本"と"精読で辞書をひきながら読む本"を決められるそうなのです。私はいつも結局、辞書を引いたり、見返しもしないのに線を引いてしまうのですが、小雨さんみたいに"読み分け"をするのっていいなと思いました。

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『玉米』
玉米はトウモロコシではなく少女の名前。7人の女の子と1人の男の子が登場する中編小説からなる文革期の小説です。書記である父は跡取り息子が欲しくて仕方がなく、妻はそのために子どもを産み続け・・・・7人目(!)でやっと男の子を授かるのですが、妻はもう育てる気が失せてしまいます。長女でしっかりものの玉米が妹・弟たちの世話をし、一家を取り仕切りまりますが、父は村の別の女性と浮気をしてしまう。玉米は腹いせに浮気相手の女性の前で弟の世話をしたりする、というお話です。この本には他にも、玉米の姉妹を主人公とした中編小説が入っているそうで、"一気に読ませる実力がある"とのことでした。この作家さんは他に有名な作品『推拿』を書いていますね。

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『中国好小说』
2冊目は苏童の作品を集めたもの。『人民的鱼』という作品を読んで、苏童が好きになったという小雨さん、『人民的鱼』について熱く語ってくださいました!

農村で書記をしている男性のもとに春節の時期になるとみんな魚を持ってきます。魚ばかりもらうので、これらの魚を妻と隣の奥さんが塩漬けにするのですが、塩漬けに頭部は不要であり、また妻は頭部は嫌いなので、隣の奥さんにあげていました。彼女は魚の頭部を持ち帰り、魚のスープを作るようになるのですが、時代が変わり、夫の地位は下がり、魚を持ってくる人は次第に減っていく一方で、隣の奥さんがつくる魚のスープ有名になり、レストランを開くことになる、というお話。(・・・魚のスープを飲みたくなりませんか)。

この説明を聞いて人民の魚を読んでみたくなりましたが、こちらの本には入っていないそう。収録されているのは《汉语分级阅读1》(Graded Chinese Reader 1)だそうです!

☆ぺりおさん(ブログ:『中国語で本を読むよ!』

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『卡子』
ぺりおさんが紹介されたのはホラーではなく(!?)、国共内戦、朝鮮戦争時の著者の体験を綴ったドキュメンタリーです。亜東書店に新聞記事の書評と共に「読みなさい!」とお勧めされていたのを見て買ったのだそう。

著者の遠藤誉さんは、満州生まれ。製薬会社で働く父を持ち、7歳で終戦を迎えます。麻薬の治療薬という貢献度の高い研究をしていた父は事実上残留を余儀なくされ、長春の工場で暮らしていたところ、ロシア兵が入ってきます。八路軍が来たかと思えば、次は国民党軍がやってくる。この時点ではまだ食料がありましたが、2年後、毛沢東の命令により食料封鎖が行われます。電気、ガスも完全停止、真冬の時期にこの封鎖が150日も続きます。中国人も含め33万人が餓死していきます。

タイトルの『卡子』が意味するのは、包囲網と包囲網の間を指すとのこと。まず八路軍による第一包囲網があり、役に立つと判断された医療関係者等は包囲網の外に出られます。第二の包囲網は国民党で、第三の包囲網が人民解放軍。"卡子"は第二と第三の包囲網の間のことなのです。しかも人民解放軍による開放は月に1回程。公園程の面積しかない"卡子"には莫大な数の死体が積み上げられ、ホラー映画をはるかに上回る描写だとか。

日本で出版され、中国語版は大陸では販売されていないようです(台湾では販売済み)。長春包囲戦は中国ではなかったことにされているということから、大陸で販売されていないのも理解できますね。恥ずかしながら、長春包囲戦を初めて知りました。この本を読んで理解を深めたいです。

☆Mangoさん

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『英派 点亮台湾的这一里路』
Mangoさんがご紹介されたのは、台湾総統・蔡英文の自著。Mangoさんは、蔡英文総統が選挙で勝利したときの勝利演説と、5月の就任演説を聞いて大変感銘を受け、この本に出会ったそうなのです。Mangoさんがこの本を選ばれたのは、政治に興味があったからというよりも、人物に興味があり、どんな人なのか、どんな人生を送ってきたのか知りたいという思いからでした。平易な中国語で、そんなに辞書を引かなくても読みやすいようです。蔡総統の背景は全然知りませんでしたが、学者だったんですね!

原書に限らず、企業の創業者のインタビューが載っている『天下雑誌』などを読まれるのも、"人"に興味があるからと語られていました。Mangoさんに中身を見せていただいて、ビジネス雑誌で難しそうな印象だった『天下雑誌』が以前より身近に感じられました。

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アプリで1回分600円で買えるようです☆

☆状元さん(ブログ:『状元への道 汗牛充棟 読書日記』『中華 状元への道』、note:Gaku Ito

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『文化苦旅』
原書会初参加の状元さん、この日のために取り出したのが積読本だった『文化苦旅』。1章を選んで、深く深く読み込んできてくださいました。

私にとって状元さんは、1を見て10(もっとかも)の面白さを発見する方。私が何も感じずに見過ごしていたことでも、状元さんの目を通すと物事の面白みが格段に増えるのです。

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『文化苦旅』で選ばれたのは华语情结。原書会は中国語を学ぶ読書ファンが集まる場所ということで、「国語コンプレックス」のこの章を選んでくださいました。

中国の母親たちが子どもに勉強させて、外国に留学、さらには移民をさせ、自分も移民してしまう事例が多いのですが、著者はそれを歴史的観点から上手に書いているとのこと。かつて世界の中心、国際都市であった唐には世界中から人が集まっていましたが、宋、明、清の時代を経て、中国は凋落していく。それに伴い中国の技術が落ち込み、西洋の技術が上がっていく。その後、中国は経済的に復活を成し遂げますが、中国が持っていた文化はどこに行ってしまったのか?というのが著者の訴え。

海外で出会った中国人を書いていて、例えばシンガポールにいる福建人。第一代目は福建語を話していますが、第二代目は普通話、第三代目は英語になってしまっている。著者の「中国の言葉や文化はどこに行ってしまったのか?」という嘆きが伝わってくるそうです。

状元さんの言葉、特に漢字に対する想いが熱いです。中国語のできる外国人はたくさんいますが、漢字ができるのは中国人と日本人。4000年の歴史にインターネットで漢字でアクセスことがすごいし、漢字がわかることで「豊かな文化的なことを楽しむことができる。とてもラッキーなこと」だと。

「华语情结」をまず読んでみて、面白いから!と語られていました。実は私も読んだことがあったのですが、「华语情结」は記憶になかったので、状元さんのように読み込みたいと思います。

私はこちらを紹介させていただきました。
『対決 2』はまたブログで紹介します。

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その他、会でみなさんがおすすめされていた映画・作家情報がこちら。



奥村和一
マクザム
2008-07-25


カル・ペン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2015-07-03


ラン・シャン
ジェネオン エンタテインメント
2006-09-22


金庸(有名な武侠作家)
(他にもあったかもしれません💦)


参加されたみなさま、本当にありがとうございました!
知らないことばかりでお恥ずかしい。でもおかげでたくさんの知識に触れることができました。
お勧めいただいた映画を早く見たいです。

次回の通常原書会は9月末または10月上旬を予定しています。
その前に初の試みとしてママ原書会を開催します。
マニアックな話ができるママ友ほし~い!という方、ぜひお集まりください。

近日中にイベント案内を配信する予定ですので、ご興味ある方は以下のページよりお申込みくださいね。

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