韓寒の「1988」を読み終え、現在は严歌苓の「第九个寡妇」を読んでいます。手に取るまで何度も迷った本でした。この作者の作品は、毎回読むたびにストーリーに入り込めて、後にも残るので好きな作家なのですが、私にとっては文章の難易度が高いため、毎回手に取る度に「わかるかな?」と不安になります。

その不安が見事に的中し、この作品は今まで読んだ彼女の作品で最も読解に苦労しています。冒頭15ページほどで読むのをやめようかとも思いましたが、なんとか諦めず後半まで読み進めました。

严歌苓の文体は、あまり実用的でないものが多いですが、この本はとりわけその傾向が強いです。40年代後半から階級闘争の時代を背景にしているため、登場する単語には当時のものがあります。動詞も方言が多いように思えます。

严歌苓の作品は、勉強のために読むというより、中国の歴史や社会を理解するつもりで読むのが一番ですね。階級闘争の時代のことなど、当時の社会のタブー、思想体系がおぼろげながら理解できてきました。

この時代を背景にした作品は多々ありますが、今回この作品に惹かれたのは主人公の女性の時代に流されない不動たる個性と、時代をうまく生き抜いて行く生命力でした。周囲に動じず自分の尺度で生きつつも、不要に反抗することなく、自分を貫く風格を彼女特有の個性にしており、彼女自身はその時代の流れをまるで違う時代に生きる人のように客観的にとらえています。そのため善悪の判断もその時代の人々と違います。当時であれば死刑に相当する行為を、彼女は当然のように成し遂げています。

严歌苓の描く世界には毎回舌を巻きますが、今回も例外ではありませんでした。さらに不思議なのが、これだけ難しくても読者をひきつけて離さないところ。こうして私は今後も彼女の世界に魅力されていくのでしょう。

さてさて、もうすぐラスト。どんな展開になるのか楽しみです。